皮膚炎とは皮膚の上部層の炎症で、湿疹ともいいます。かゆみ、水疱、発赤、腫れ、じくじくする、かさぶたができる、かさついてうろこ状になるなどの症状がみられます。
皮膚炎は、赤くてかゆみのある発疹を引き起こすさまざまな病気の総称で、広範囲に使われる用語です。「湿疹」という場合もあります。皮膚炎は、体の特定の場所にしかできないものも、全身のどこにでもできるものもあります。原因がはっきりわかっているものも、わからないものもあります。しかし、皮膚炎が、ひどい乾燥や皮膚をひっかくこと、炎症を起こす物質、アレルゲン(アレルギー誘発物質)などに対する皮膚の反応であるという点は共通しています。問題の物質が直接皮膚に接触するのが典型的ですが、飲みこんだために起こることもあります。どのような皮膚炎でも、皮膚をひっかいたりこすったりし続けると、その部分は皮膚が厚く、硬くなってしまいます。
皮膚炎は、ある物質に対する短い時間の反応として現れることもあります。そのような場合、皮膚のかゆみや赤みといった症状が、数時間から1〜2日間だけ起こります。慢性皮膚炎はしばらくの間続きます。慢性皮膚炎に特になりやすいのは、手と足です。手はさまざまな異物や物質に触れる機会が非常に多いからです、また、足は靴下と靴に包まれているため温かくて湿った環境、つまり真菌が繁殖しやすい状態にあるからです。
慢性皮膚炎には、接触皮膚炎、真菌性皮膚炎、診断と治療が不十分だったその他の皮膚炎、または原因不明の皮膚病である汗疱(かんぽう)(皮膚のかゆみと非感染性の発疹: 汗疱を参照)、手掌角化症湿疹(しゅしょうかくかしょうしっしん)などがあります。慢性皮膚炎にかかると皮膚にひび割れや水疱ができるので、細菌感染症につながるおそれがあります。
接触皮膚炎
接触皮膚炎とは、特定の物質と直接接触したことが原因で起こる皮膚の炎症です。発疹は強いかゆみを伴い、生じる部位は限定されていて、しばしば正常な皮膚との境目がはっきりしています。
ある物質が皮膚と接触した場合、皮膚への刺激(刺激性接触皮膚炎)、アレルギー反応(アレルギー性接触皮膚炎)の、2つのしくみのいずれかによって炎症が起こることがあります。
刺激性接触皮膚炎は、化学物質が皮膚に直接損傷を与えた際に起こります。典型的な刺激物には、酸、アルカリ(パイプ洗浄用洗剤など)、溶媒(マニキュアの除光液に使われるアセトンなど)、強力なせっけんなどがあります。これらの化学物質には、わずか数分で皮膚に異常を起こすものも、長時間さらされてから異常を起こすものもあります。刺激物に対する皮膚の敏感さは、人によってかなり異なります。非常にマイルドな成分でできたせっけんや洗剤でも、頻繁に使用したり長期間使用したりすると、人によっては刺激を受けてしまいます。
アレルギー性接触皮膚炎は、皮膚に接触した物質に対して体の免疫システムが示す反応です。ある物質に一度接触しただけで感作される(反応が起こるようになる)こともありますし、何度も接触した後に感作されることもあります。ある物質に感作されると、次にその物質に触れたとき、4〜24時間以内にかゆみや皮膚炎が起こります。ただし、一部の人、特に高齢者では、物質と接触してから反応が起こるまでに3〜4日間程度かかる場合もあります。
アレルギー性接触皮膚炎の原因となる物質は無数にあります。最も一般的な原因物質には、ウルシ科の植物などの植物性のもの、ゴム製品、抗生物質、香料、防腐剤、ニッケルやコバルトなどの金属類があります。ニッケルは宝石やアクセサリー類によく含まれている成分ですが、米国では女性の約10%はニッケルにアレルギーがあるといわれています。ある物質に対し、長い間何の問題もなくそれを使ったり接触したりしていても、アレルギー反応は突然に起こります。皮膚炎治療のために使用する軟膏、クリーム、ローションといった薬剤でも、アレルギー反応は起こりえます。仕事上で接触する物質に反応して皮膚炎になることもあります(職業性皮膚炎)。
接触皮膚炎は、ある物質に接触した後に、太陽光線にさらされて初めて起こることもあります(光線過敏性、または光毒性接触皮膚炎)。このような反応を起こす物質には、日焼け止め、アフターシェーブローション、香水、抗生物質、コールタール、油などがあります。
症状と診断
接触皮膚炎は、その原因やタイプにかかわらず、いずれもかゆみと発疹を引き起こします。一般にかゆみはかなり強いのに対し、発疹は軽度ですぐに消える赤みから、ひどく腫れたり大きな水疱ができる重度のものまでさまざまです。普通、発疹は小さな水疱を含んでいます。原因となる物質に触れた部分の皮膚にのみ、発疹ができます。発疹はその中でもまず皮膚が薄く敏感な部分にできて、その後皮膚が厚いところや物質との接触が少なかったところにできていくので、発疹が広がっていっているような印象を受けます。発疹や水疱の中の液体に触れても、接触皮膚炎が物質に触れなかった部分にうつったり、他の人にうつったりはしません。
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接触皮膚炎の原因は、簡単に判明するとは限りません。人は普通、自分がどんな物質に触れているかを特に意識せずにいろいろなものに触れているからです。発疹が皮膚のどこに最初にできたかは、原因を調べるための重要な手がかりです。特に、発疹が身につけている衣服やアクセサリー類の下に出た場合や、日光にあたった部分だけに出た場合は大きな手がかりとなります。ただし、原因となる物質に手で触れた後、無意識に顔に触れたことが原因となっている場合もあります。顔の皮膚は敏感なので、物質に触れた手は何ともないのに、顔にだけ発疹が出ることもあります。
接触皮膚炎の疑いがあり、原因が特定できない場合は、パッチテストを行います。これは、接触皮膚炎の原因になりやすい物質を塗布した小さなシールを患者の皮膚に1〜2日間貼りつけて、その下に発疹が出るかどうかを調べるテストです。このパッチテストは有用ですが、万能ではありません。患者はさまざまな物質に敏感である可能性があり、パッチテストで使った物質に反応があってもそれが原因とは限らないからです。パッチテストをどの物質で行うかは、どんな物質に接触した可能性があるかを検討して決めなくてはなりません。
予防と治療
原因となる物質に触れないようにすることで、接触皮膚炎は予防できます。触れてしまった場合、せっけんと水ですぐに洗い落とすとよいでしょう。原因物質に触れることがあらかじめ予測できる状況では、手袋や皮膚を保護できる衣類が役に立ちます。ウルシ科の植物やエポキシ樹脂などは、保護用クリームを塗ると直接皮膚に触れないように防ぐことができます。注射や錠剤による脱感作(原因物質に対する過敏性を減らす試み)では、接触皮膚炎の予防効果は期待できません。
原因物質にそれ以上触れない環境をつくらない限り、治療の効果は上がりません。原因物質との接触がなくなれば、普通は1週間程度で皮膚の赤みはなくなります。水疱は少しの間じくじくしてかさぶたになったりしますが、まもなく乾いて治ります。皮膚がかさついてはがれる、かゆい、一時的に皮膚が厚くなるといった症状は、数日から数週間ほど残る場合があります。
かゆみを抑えるには、数々の局所用薬や経口薬があります(皮膚のかゆみと非感染性の発疹: 治療を参照)。皮膚炎が起きている範囲が狭ければ、冷たい水か酢酸アルミニウム(ブロー液)に浸したガーゼを1日に数回、1回1時間ほど貼っておくと症状を鎮めることができます。範囲が広い場合、冷たい水での入浴を短時間行うと症状が軽減されます。その際、コロイドオートミール(かゆみを抑える働きのある市販の入浴剤)を水に加えてもよいでしょう。医師は大きい水疱内の液体を吸引することがありますが、水疱自体はそのままにしておきます。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、皮膚の上層部に生じる、かゆみを伴う慢性的な炎症です。花粉症や喘息(ぜんそく)のある人や、家族にそれらの病気の人がいる人に非常に多くみられる病気です。
アトピー性皮膚炎は非常に多くみられる病気で、米国では1500万人の患者がいます。患者の約66%が1歳未満で発病、90%が5歳までに発病しています。患者の半数は小学生くらいのうちに治りますが、約半数の人では生涯続きます。
アトピー性皮膚炎の原因はわかっていませんが、アレルギー性の病気、特に喘息、花粉症、食物アレルギーのある人に多く発症します。これらの病気と皮膚炎の関連性はまだはっきりわかっていません。この病気は特定の物質に対するアレルギーではありません。また、伝染もしません。
アトピー性皮膚炎を悪化させる要因には、感情的なストレス、気温や湿度の変化、細菌性の皮膚感染症、刺激を与える衣類との接触(特にウール製品)などがあります。乳児では、食物アレルギーがアトピー性皮膚炎を誘発することがあります。
症状
乳児では、赤くてじくじくして、かさぶたを伴う発疹が、顔、頭皮、おむつで覆われる部分、手、腕、脚や足にできます。体の広い部分にもできることがあります。もっと年長の小児や成人の場合、発疹は1カ所だけ、あるいは数カ所に部分的にできることが多く、繰り返しできることもあります。発疹がよく出る部位は、手、上腕部、ひじの内側、膝の裏などです。
発疹の色や重症度、発生部位はさまざまですが、一様にかゆみを伴います。かゆみはかかずにはいられないほどひどいことが多く、「かゆいからかく、かくとさらにかゆくなる」という悪循環を引き起こし、症状を悪化させます。かゆい部分をかいたりこすったりすると皮膚に裂け目ができ、感染症を起こす細菌の入り口をつくってしまいます。
単純ヘルペスウイルスに感染すると通常は狭い部分に非常に小さく、かすかな痛みを伴う水疱ができますが(ウイルスによる感染症: 単純ヘルペスウイルス感染症を参照)、アトピー性皮膚炎のある人がこのウイルスに感染すると、広範囲の皮膚炎、水疱、高熱を伴う重い病気(ヘルペス性湿疹)になることがあります。
診断と治療
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診断は、典型的なパターンの発疹ができているかどうかと、家族にアレルギーのある人がいるかどうかに基づいて行います。
治癒させる方法はありませんが、局所用薬や経口薬でかゆみを抑えることはできます(皮膚のかゆみと非感染性の発疹: 治療を参照)。そのほかに有効な方法もいくつかあります。具体的には、患者がそれに対して敏感で、皮膚に刺激を受けるとわかっている物質や食品を避けることで、発疹が出るのを防げます。市販の保湿剤やワセリン、植物性オイルを使って皮膚のうるおいを保つことも必要です。保湿剤は、入浴後で皮膚がうるおっているときに使用するのが最も効果的です。長期にわたって治療を受ける場合、ステロイド薬の使用量を制限するため、1週間あるいはさらに長期にわたってステロイド薬をワセリンに切り替える場合もあります。ステロイドの錠剤は、難治性の症例に対する最後の手段です。
成人の患者には、紫外線を照射する光線療法がしばしば効き目があります(光線療法:皮膚病の治療に紫外線を活用を参照)。この治療法は小児にはほとんど行われません。皮膚癌や白内障といった長期的副作用を引き起こすおそれがあるからです。
アトピー性皮膚炎が重症の場合、シクロスポリンの経口薬とタクロリムスの軟膏を使用して、自己免疫システムを抑制します。喘息発作を抑える新しい経口薬のザフィルルカストは、アトピー性皮膚炎の治療にも効果的です。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは、主に頭皮や顔、ときにはその他の部分にみられる慢性皮膚炎で、皮膚の表面のかさつきやフケなどの症状(鱗屑、落屑)を伴い、その原因はわかっていません。
脂漏性皮膚炎は、生後3カ月以内の乳児に最も多く、30〜70歳の成人にも発症します。この病気は男性に多く、しばしば遺伝し、寒い気候で症状が悪化します。エイズ患者の約85%も、この脂漏性皮膚炎を発症します。
症状
脂漏性皮膚炎の症状は徐々に現れます。頭皮に乾いた、または脂っぽい粉状の皮膚のはがれ(フケ)が生じ、かゆみを感じることもありますが抜け毛はみられません。ひどくなると黄色から赤みがかった、うろこ状のかさつきを伴う吹き出ものが、髪の生えぎわ、耳の後ろや中、眉の上、鼻筋や鼻の周囲、胸、背中の上部などにできます。生後1カ月未満の乳児では、頭皮に厚く黄色いかさぶた状の発疹(新生児頭部皮膚炎)ができたり、耳の後ろの皮膚が黄色くかさかさになったり、顔に赤い吹き出ものができることがあります。この頭皮の発疹に伴い、治りにくいおむつかぶれもしばしばみられます。もっと年上の小児や成人では、厚いうろこ状のかさつきを伴う治りにくい発疹ができ、皮膚が大きなフケのようにはがれ落ち ます。
治療
頭皮の症状は、ジンクピリチオン、硫化セレン、抗真菌薬であるサリチル酸や硫黄、タールなどの成分を含むシャンプーで治療できます。これらの薬用シャンプーを1日おきに使用し、症状が治まってきたら回数を減らし週2回使用します。ケトコナゾールクリームも同様に効果があります。成人で、厚いかさぶたやうろこ状のかさつき(鱗屑)が生じている場合、ステロイドやサリチル酸を塗ってその上からシャワーキャップをかぶって1晩おくと、症状が和らぎます。
多くの場合、治療は何週間も継続しなくてはなりません。治療をやめた後に症状が再発したら、治療を再開します。頭をはじめ、症状が出ている部分には、局所用ステロイドも使われます。顔には、1%ヒドロコルチゾンのような弱いステロイド薬を使うべきです。弱いステロイド薬でも、長期間使用すると皮膚が薄くなるなどの問題が生じるおそれがあるので、慎重に使用しなくてはなりません。
乳児や低年齢の小児の頭皮に、厚いうろこ状のかさつきを伴う発疹が出ている場合、就寝時に、鉱物油にサリチル酸を混ぜたものを柔らかい歯ブラシにつけて発疹にそっとすりこみます。また、頭皮は刺激の少ないベビー用シャンプーで毎日洗うようにします。1%ヒドロコルチゾンクリームを頭皮にすりこんでもいいでしょう。
貨幣状皮膚炎
貨幣状皮膚炎は、かゆみ、発疹、炎症が持続する状態で、小水疱、かさぶた、うろこ状の皮膚を伴う、コインのような形の湿疹が特徴です。
貨幣状皮膚炎の原因はわかっていません。この病気は中年の成人に発症することが多く、皮膚が乾燥している場合に現れ、冬に最もよくみられます。はっきりした原因なしに発疹が出たり消えたりすることもあります。
まずかゆみのある円形の発疹ができますが、この発疹は吹き出ものや水疱を伴い、これがそのうちじくじくしてきてかさぶたになります。発疹は広がることもあります。発疹は腕や脚の内側、尻の部分に出ることが非常に多いですが、胴体部分にもできます。
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多くの場合、保湿剤で効果が得られます。その他の治療法としては、(1)抗生物質の内服、(2)ステロイドのクリームか注射、(3)紫外線照射を受ける光線療法があります。しかし、どの治療法も、十分な効果を上げることが難しいといえます。
全身性剥脱性皮膚炎
全身性剥脱性皮膚炎(ぜんしんせいはくだつせいひふえん)は紅皮症ともいい、全身の皮膚が赤くなってひび割れ、うろこ状にはがれやすい状態(鱗屑、落屑)になる重度の炎症です。
この病気の原因としては、ペニシリン、スルホンアミド、イソニアジド、フェニトイン、バルビツール酸などの薬が挙げられます。また、一部の皮膚の病気、たとえばアトピー性皮膚炎、乾癬、接触皮膚炎などの合併症としても発症します。リンパ腫、つまりリンパ節の癌(リンパ腫: はじめにを参照)も、この病気を引き起こします。しかし、原因がわからない場合もしばしばあります。
症状と診断
剥脱性皮膚炎は急速に始まる場合も、ゆっくりと始まる場合もあります。まず、全身の皮膚表面が赤く、つやが出ます。それから皮膚がうろこ状に厚くなり、かさぶたができます。毛や爪が抜け落ちる場合もあります。かゆみがあったり、リンパ節が腫れる患者もいます。発熱も多くみられますが、損傷した皮膚から熱が逃げていくため、本人は寒いと感じます。大量の体液とタンパク質もにじみ出ていき、傷ついた皮膚は感染症にかかりやすい状態になります。
剥脱性皮膚炎の症状は皮膚感染症の症状に似ているので、皮膚と血液のサンプルを検査して、感染症が原因ではないことを確認する必要があります。
治療
この病気では早期の診断と治療を行うことが重要です。損なわれた皮膚が感染症にかかるのを防ぎ、体液やタンパク質が大量に失われて生命に危険が及ぶのを防ぐためです。
剥脱性皮膚炎が重度の場合、入院して感染予防のための抗生物質の投与、皮膚表面から失われた体液を補うための輸液、栄養補給を受けなくてはなりません。体温調節のため、薬の投与や温めた毛布を使用することもあります。冷水浴をして、その後ワセリンを塗ってガーゼを貼ると皮膚を守るのに役立ちます。さまざまな治療法の効果が上がらない、あるいは病気が悪化した場合のみ、プレドニゾロンなどのステロイドを経口薬か注射で投与します。皮膚炎を引き起こす可能性のある薬や化学物質はすべて使用を避けなくてはなりません。剥脱性皮膚炎の原因がリンパ腫である場合、リンパ腫の治療が有効です。
うっ血性皮膚炎
うっ血性皮膚炎とは、脚の下部に血液と体液がたまったことが原因で起こる炎症です。
うっ血性皮膚炎は、拡張蛇行静脈(広がった静脈がねじれて入り組んだ状態)(静脈の疾患: 静脈瘤を参照)や、浮腫のある人に起こりやすい病気です。通常は足首に生じますが、膝に向かって症状が上に広がる場合もあります。まず、皮膚が赤くなって軽度のうろこ状になります。数週間から数カ月の間に、その部分の皮膚が濃い褐色になります。やがてその部分の皮膚が傷ついて、ただれや潰瘍(かいよう)ができます。足首の近くにできるのが典型的です。潰瘍は細菌感染を起こすことがあります。うっ血性皮膚炎では足がかゆくなって腫れますが、痛みはありません。しかし、潰瘍ができると痛みます。
治療
この病気には、足首の周囲の静脈に血液がたまるのを防ぐことを目的とした、長期治療を行います。長時間座ったままになるときは、足を心臓の高さまで持ち上げた姿勢をとるようにします。医師が処方する適切な強さの弾性ストッキングを着用し、適度に脚を圧迫すると、血液がたまるのを防いで腫れを軽減することができます。ただしデパートで売っている「サポートストッキング」では不十分です。
皮膚炎の症状が出はじめたばかりなら、水道水や酢酸アルミニウム(ブロー液)に浸したガーゼで湿布をすると心地良く、皮膚をきれいな状態に保つことで感染予防にも役立ちます。病状が悪化して患部が熱をもって赤くなり、小さい潰瘍ができ膿(うみ)が出る場合は、より吸収力のある包帯を用います。ステロイドクリームも効き目があり、しばしばペースト状の酸化亜鉛と混ぜて、皮膚に薄く塗ります。治りが悪くなることがあるので、ステロイドを潰瘍に直接塗ることは避けます。
潰瘍が大きく、広範囲にわたっている場合は、特に水分を多く含むハイドロコロイド包帯やハイドロゲル包帯が使われます。抗生物質は、皮膚がすでに感染を起こしている場合以外は使いません。潰瘍が非常に大きい場合は、体の他の部分から皮膚を移植することもあります。
ウンナ軟膏ブーツと呼ばれる、亜鉛入りのペースト状ゼラチンを含んだ伸縮性のある包帯を使用する場合もあります。この包帯を足首から脚の下部にかけて巻くと、その部分は固定されますがギプスほど硬くはなりません。このブーツ状包帯は腫れが広がるのを抑えて皮膚を刺激から守り、包帯に含まれたペーストには皮膚の治療効果があります。最初のうちは、この包帯を2〜3日ごとに交換しますが、しばらくたてば1週間は巻いたままにしておいて大丈夫です。
うっ血性皮膚炎では、皮膚が非常に刺激を受けやすい状態にあるため、病状を悪化させる抗生物質入りクリーム、救急用(麻酔用)クリーム、アルコール、マンサク、ラノリン、その他の化学物質の使用は避けなくてはなりません。
限局性掻爬皮膚炎
限局性掻爬皮膚炎(げんきょくせいそうはひふえん)は、皮膚の上層部に生じる、かゆみを伴う慢性の炎症で、慢性単純性苔癬(まんせいたんじゅんせいたいせん)、神経皮膚炎ともいいます。
限局性掻爬皮膚炎は、皮膚の一部を慢性的にかきむしることが原因で起こります。かくとよけいにかゆみが増し、「かゆいからかく、かくとよけいかゆくなり、さらにかく」という悪循環に陥ります。皮膚をかく行為は特に理由なく始まることもあれば、何かの病気、具体的には接触皮膚炎や寄生虫が原因で始まることもありますが、原因となる病気が治った後もかく行為がずっと続いてしまうことがあります。なぜそのようなことが起こるかはわかっていませんが、心理的な要因が関係していると考えられます。この病気はアレルギー性ではないようです。限局性掻爬皮膚炎は、男性よりも女性に多く、アジア系人種とアメリカ先住民に多いようです。年代的には、20〜50歳の人に発症するのが一般的です。
症状と診断
この病気は体のどの部分でも発症する可能性があります。最も多いのは頭、腕、脚ですが、肛門(肛門と直腸の病気: 肛門のかゆみを参照)や腟(ちつ)(婦人科疾患の症状と診断: 腟のかゆみを参照)で発症することもあります。初期段階では、皮膚の見た目は正常ですが、かゆみがあります。症状が進むと、皮膚をかいたりこすったりし続けた結果、その部分の皮膚が乾き、うろこ状になり、暗い色の皮疹ができます。
治療では、最初にかゆみを引き起こした原因として何かのアレルギーや病気がないかどうかを調べます。異常が肛門や腟周辺に発症している場合、原因として蟯虫、トリコモナス症、痔、局所性の膿の分泌、真菌感染症、いぼ、接触皮膚炎、乾癬(かんせん)などがないかどうかを調べます。
治療
この病気を治すためには、患者はその部分の皮膚をかいたりこすったりすることを完全にやめなくてはなりません。その後、かゆみに対する標準的な治療法を行う必要があります(皮膚のかゆみと非感染性の発疹: 治療を参照)。ステロイド薬をしみこませた外科用テープを貼ると、かゆみと炎症を和らげ、かつ、皮膚をかかないよう保護することができます。かゆみを抑えるため、長時間作用型のステロイド薬を皮下注射することもあります。
肛門や腟周辺に発症している場合は、ステロイドクリームによる治療が最適です。クリームを塗った上から、その部分を保護するためにペースト状の酸化亜鉛を塗る場合もあります。このペーストは鉱物油でふき取ります。
口周囲皮膚炎
口周囲皮膚炎(こうしゅういひふえん)は口の周囲やあごにできる、赤色で凹凸を伴う発疹です。
この病気の原因はわかっていませんが、主に20〜60歳の女性に発症します。
治療は、テトラサイクリンなどの抗生物質を内服します。抗生物質を服用しても発疹が消えず、病状が重い場合は、にきび用の薬であるイソトレチノインが効くことがあります。ステロイド薬や一部の油性の化粧品、特に保湿剤を使うと、病状が悪化する傾向がみられます。
汗疱
汗疱(かんぽう)とは、かゆみを伴う水疱が手のひらや指の横にできるのが特徴の慢性皮膚炎です。足の裏にできることもあります。
汗疱は、異常な汗による発汗障害と呼ばれることがありますが、実際にはこの病気と汗は関係ありません。汗疱の原因はわかっていませんが、要因としてストレスの影響、および、ニッケル、クロミウム、コバルトなどを体内に取りこんだことが影響している場合があります。思春期や若年の成人に多くみられます。
水疱はうろこ状で赤く、じくじくしていることが多くみられます。この病気は突然発症して2〜3週間続きます。そのままにしておくと数週間で消えます。過マンガン酸カリウムか酢酸アルミニウム(ブロー液)に浸した湿布をすると、水疱を消す効果があります。かゆみと炎症を抑えるには、効き目の強い局所用ステロイド薬が役立ちます。
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